DESCENTE ALLTERRAIN × Ryohei Kamide
Profile
上出 遼平
ディレクター、プロデューサー、作家。テレビ東京で『ハイパーハードボイルドグルメリポート』などを手掛け、2022年に退社。現在はニューヨークと日本を行き来しながら、映像制作に加え、Podcast『UNCOVER 新章 未解決事件現地調査』をはじめとする音声コンテンツの制作や執筆など、メディアを横断して活動している。著書に『歩山録』『ありえない仕事術 正しい“正義”の使い方』など。

Q.1
ニューヨークと日本を行き来する生活を3年くらい続けられているそうですね。これだけ移動を繰り返していると、さすがに慣れるものですか?
いや、移動は苦でしかないですよ(笑)。ニューヨークに1ヶ月いて、日本に2週間いて、みたいなことを繰り返していて、二拠点で生活できること自体はいいんですけど、移動はやっぱり大変ですね。
まあでも、まとまった時間が取れるという点ではいいのかも。飛行機に乗っている時間より、家から空港まで行ったり、乗り換えたり、スーツケースを持って移動したりする方が嫌かもしれないですね。飛行機に乗ってしまえば、本を読んだり、寝たり、原稿を書いたりできるので。
Q.2
上出さんといえば、最近はPodcastなど音声の活動が印象的です。“音”メインのメディアに注目するようになったきっかけを聞かせてください。
映像ってとにかく手数が多いんです。カメラを持って、撮影して、データを取り込んで、充電して、編集する。海外で一人で撮影していたときは、一日中撮影してホテルへ戻ったら、今度はデータを取り込んで充電して、また翌朝出る。その繰り返しでした。
コロナ禍はカメラを持って動くこと自体が難しかったので、もっと少ない道具と人数でできる方法を考えるようになった。それで音声を始めたんです。
Q.3
実際にやってみると、手軽さ以外にも音声ならではの面白さがあったのでは?
そうですね。音声だと一人の人の話を長く、深く聞くことができる。やってみたら、今の自分には映像よりも合っている部分があることに気づきました。
以前、とある人たちを取材したときに、映像だと見た目の情報があまりにも強かったことがあって。服装や表情を見た瞬間に、「こういう人だろう」という先入観が生まれてしまう。でも音だけなら、そういう視覚的な情報を取り除いて話を聞くことができる。そのときは「映像が邪魔だった」と感じました。
Q.4
映像、音声、文章とさまざまな方法で表現されていますが、どう使い分けているのでしょうか?
そもそも戦略的にいろいろなことをやっているわけではなくて、単純に飽きっぽいんですよ(笑)。やってみないと、自分が何を好きなのか、何が得意なのかもわからない。そうやって映像、音声、文章といろいろ試してきた結果、それぞれの特性が少しずつわかってきた感じです。
今はまず対象があって、それに対してどのメディアが適しているのかを考えます。映像はすごくキャッチーだけど、それによって深く入っていけないこともある。逆に音声は、見た目から入ってくる情報がないぶん、長く深く話を聞くことができる。だから映像、音声、文字のどれを使うかは、その都度、対象に合わせて選んでいます。
Q.5
場所もメディアも横断する生活では、服にも汎用性が必要になりそうです。普段はどんな基準で選んでいますか?
心地よさはめちゃくちゃ大事ですね。少ししゃがんだだけでどこかが突っ張るとか、そういうことがすごく嫌なんです。それに、事件の取材に行ったかと思えば、百貨店で展示をしたり、山に登ったりもする。TPOがかなりバラバラなんですよね。そのたびに服や靴を用意するのは嫌なので、なるべくマルチパーパスに使えるものを選んでいます。
今回着た服も、そういう意味では自分の生活に取り入れやすいですよね。このまま取材を受けてもいいし、事件を追いかけてもいい。どっちにも行ける、みたいな。
Q.6
どういう点でそれを感じましたか?
機能的な服って、往々にしてその機能性をことさら主張するデザインが組み込まれてしまいますよね。消費者に一目で機能的だと感じさせるその表現は、商業的な目的を達成するために必須と言えますが、時にそれは着用するシチュエーションを限定することにもなります。
その点、このジャケットはそういう主張が抑えられているから、いろいろな場面で着られるんじゃないかなと思いました。
Q.7
服に限らず、身の回りのものは少ない派ですか?
少なければ少ないほどいいですね。身体的にも楽だし、ミスもなくなる。リスクを抑えるには、身の回りのものを減らすのが鉄則だと思っています。
山では「手数」という考え方があるんです。例えば、ペグを8本打つより6本で済む方がいい。複雑になればなるほど手数が増えて、ミスも増える。疲れ切っているときってものを考えられないので、手数が一つでも少ない方がいいんです。シンプルであることは、本当にあらゆる局面で大事だと思っています。
Q.8
シンプルであることを大切にする一方で、仕事では映像、音声、文章と、むしろやることは増えていますよね。上出さんの活動の先に、何かゴールはあるんですか?
終着点は死ですね(笑)。別にゴールはないです。ここにたどり着きたいとか思っていることもないし。
映像をやっていたところから音声を始めたのも、最初から何かゴールがあったわけではないんです。いろいろやってみた結果、音声や文字の方が自分に合っている部分があることがわかった。そのときに興味があるものを、そのときに合った方法でやっているという感じですね。
Q.9
ゴールを決めず、そのときにやりたいことをやっている。そうなると、仕事と遊びの境界もあまりないのでは?
ないですね。基本的にやりたいことしかやっていないので。自分の場合、仕事だから仕方なくやっているということがあまりないんですよね。やりたいことをやって、それが仕事になっている。だから、どこからが仕事で、どこからが遊びなのかは、自分でもあまり分けていないです。
Q.10
では逆に、上出さんにとって純粋な“遊び”って何ですか?
スナックに行くことはさすがに遊びですね。たぶん、それさえやめたら僕の作品数は倍になるんじゃないですかね(笑)。